日本の、インターネットにある、多くの記事を見ると、総じて、グルテンが悪いというのがほとんどです。欧米の科学者によっては、上記に挙げた事柄との関連について述べられている場合もあります。
確かに、現在のところ、グルテンの成分であるプロラミン物質のグリアディン が、セリアック病発症にもっとも関係しているのではないかといわれているようです。麦パンの中でも、小麦でつくったパンが、最も健康に悪いとされているのは、その理由です。
一昨年、ようやく、既得権寄りのFDA(米国食品医薬品局)も、グルテン含有率0.002%以下のものをグルテンフリー製品とするという表示規制を公表しました。北米市場の規制統一を目指すNFCAとCCAは、さらに厳しい0.001%、0.0005%と限りなく0%に近いスタンダード達成を目指して活動しています。
では、どうして、3千年以上の長きにわたって、我々人類の不可欠な食糧だった小麦食品が、最近になって、急に、米国保健福祉省による表示規制まで行われるような食品問題になっているのでしょうか?
米国で、1960年代から小麦の品種改良がさまざまな手法で急速に促進されるようになった後、1970年代に、グルテン不耐症やセリアック病の患者数が極端に増え始めました。それ以前は、250人に1人くらいの割合だったグルテン不耐症患者が、どんどん増え、最近は13人に1人くらいまで増えています。約20倍です。その内の10%がセリアック病だと言いますから130人に1人の割合でセリアック病患者がいることになります。
品種改良では、もう一つ、約20年前、1994年、米国で、果実を柔らかくする遺伝子を操作した遺伝子組換トマト、「日持ちするトマト」がFDAに認可され、その後、売り場に登場して話題になりました。これを機に、腐りにくい食品がたくさん登場します。
過のカリスマ的政治家、ヘンリー・キッシンジャーが1973年に、こんな言葉を残しています。
Who controls the food supply controls the people.
Who controls the energy can control whole continents.
Who controls the money can control the world.
食を制する者は民を支配する。
エネルギーを制する者は領土を支配する。
貨幣を制する者は世界を支配する。
話に戻りましょう。
ある日、モンサントの研究員が、自社の「ラウンドアップ」という除草剤の試験地で耐性バクテリアを発見し、遺伝子操作して作物にこの特性を組み込み、除草剤に対して耐性を有する作物をつくることを思いつきました。
ラウンドアップに耐性を有するGMO作物をラウンドアップレディー (Roundup Ready) と呼ぶことにしました。
更に、遺伝子操作して、今度は、殺虫成分を生成するGMO作物もつくりました。
GMO食品が極めて有毒で危険だとされる科学的な理由です。
日本でGMO表示規制の対象になっている、大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、アルファルファ、ナタネ、テン菜、綿実の8作物は、すべて危険極まりないGMO作物、ラウンドアップレディーです。
当然、指折りの消費作物である小麦も品種改良と同時に、これらの作物と同じ遺伝子組み換え技術が施されました。ラウンドアップレディーが開発されました。
仮に、輸入小麦が、GMO食品だったなら、即効性の無い毒を服毒するのと同じです。それを原料にしたパンを毎日続けて摂取していたらどうなるかお分りでしょう?
今のところ、GMO小麦は輸入されていないことになっています。
では、GMO小麦は輸入されていないから、輸入小麦は安心でしょうか?
主にカナダと米国から輸入されている小麦は、交配が繰り返され、1960年代に入ると、「化学的突然変異誘発」とか「放射線学的突然変異誘発」などと呼ばれる手法でつくりだされた、粒が矮小のずんぐりした品種です。
その小麦が「モダンウィート」と呼ばれるものです。「現代小麦」といったところですが、突然変異を誘発するために、有毒化学物質や放射線を使うので、見方によっては、遺伝子組換小麦よりも危険だとする科学者もいます。
下の写真を見てください。背丈、一粒の大きさなど、おなじ小麦といっても、改良前からある本来の小麦と現代小麦とでは、まったく異なる穀物だと考えるべきです。グルテンのレベルだけを比べても10倍です。つまり、グリアディンが有害だとすれば、一昔前の小麦とは比べ物にならないくらい健康被害に繋がるということです。
小麦食品の是非をめぐる、多くの論拠のない論議は、この点の定義が欠如しているのです。
<注>GMO小麦について
ラウンドアップレディーの遺伝子組換小麦は、2000年初頭に、既に開発され、モンサント社は、米国とカナダで生産を開始する計画でした。当然に、米国での生産申請は、消費者が猛然と反対したにも関わらず、すんなりと承認されましたが、カナダでは、反対勢力に政府が負けて、カナダ政府は生産を断念しました。最大の小麦輸入国である、日本の食糧庁と製粉業界もモンサントに対して、遺伝子組換小麦の生産を始めたら輸入先を変更すると警告を発しました。そのため、米国内の小麦生産者からも先行き不安という意見が続出し、2005年、ついに、モンサントはGMO小麦の生産を断念しました。
モンサント遺伝子組み換え種子を拒否するカナダ農民
2011/04/01 にアップロード
解説は " 巨大種子企業に立ち向かうカナダの一農民 農民の権利と種子の未来とは? " Democracy Now ! へ
現代小麦は、米国やカナダで大量に収穫輸出され、様々な小麦加工食品となって、世界中の消費者が、日々莫大な量の食品を消費摂取し続けています。
日本でも、毎年消費する600万トン以上の小麦の90%は米国を主とした輸入品です。スーパーやコンビニで売られている、パン、パスタ、麺、お菓子、ケーキ、・・・等々、ほぼ全ての原料は輸入された現代小麦でつくられています。
つまり、皆さんが、スーパーやコンビニで買って毎朝食べているパンは、ほぼすべてが輸入されたモダンウィートのパンです。現代小麦は危険な小麦です。
小麦パンが健康に悪いとされる理由は、グリナディンだけではなく、現代小麦と呼ばれる正体不明な小麦でつくった食品だということが加わります。