キヌア、食卓を救う!?
南米アンデス地域原産の「キヌア」という雑穀の注目度が高まっている。現地では何千年も前から食べ継がれており、栄養価の高さが特徴。欧米ではすでにパスタやパンに広く取り入れられている。国際キヌア年である今年は日本でもイベントが開催されたり、外食チェーンがメニューに取り入れたりしている。ブームの兆しが出始めたキヌアの楽しみ方を探った。
東京都江戸川区に住むハーディマン智子さんの得意料理はキヌアを使ったサラダ。
キュウリやタマネギ、トマト、パプリカなどをさいの目に切って味付けしたサラダに、ナッツやキヌアを加える。キヌアはあらかじめ沸騰した湯に入れて15分程度煮て、冷ましておく。
野菜やナッツの歯応えにキヌアのプチプチとした食感がアクセントになり、食が進むという。息子のアレクサンダー君(6)も大好きなメニューだ。レシピ投稿サイト「クックパッド」でも紹介している。
ヨガを教えている智子さんは食への関心が高く、健康関連の雑誌でキヌアを知った。
米国に行った際にスーパーで手に入れ、作るようになったという。日本でも店頭で見つけると購入し、米と一緒に炊いたり、パンを焼く際に加えたりしている。「ちょっと割高だけれど、健康のためにスープやご飯に少しずつ入れている」という。
1997年からボリビア産のキヌアを扱う大日本明治製糖によれば、今年に入って取扱が5割に増えたという。ネット通販では同社の300㌘入りキヌアが480円程度で販売されている。クックパッドでは、サラダを中心に200近いメニューが紹介されている。
キヌアを味わえる場所も広がっている。モスフードサービスは4月に発売した「こだわり農家の野菜サラダ」(210円)のトッピングにキヌアを採用。東京農業大学(東京・世田谷)の学食では不定期でキヌアご飯の提供を始めた。
7000年前から栽培されているとも言われるキヌアが海外で注目されるようになったのは1990年代。米航空宇宙局(NASA)がその並外れた栄養価に注目し、宇宙食候補として検討したこときっかけだ。欧米ではパスタやパンの原材料として広く利用されるようになった。
日本では、国連が2013年を「国際キヌア年」に定めたことで注目度がにわかに高まった。5月には国連食糧農業機関(FAO)などが「日本におけるキヌアの可能性」と題したセミナーを開催。東京農業大学の「食と農」の博物館(東京・世田谷)では関連の展示イベントを開催中だ。
6月末にはキヌア料理のワークショップを開催。夏以降はキヌアの種まきから収穫、試食までを体験できる「キヌア栽培講座」も計画している。企画した日高憲三講師は「キヌア年をきっかけに日本での知名度を高めたい」と意気込む。
加工食品でもキヌアを取入れる動きが広がっている。丸秀醤油(佐賀市)が「キヌア醤油」(360ミリリットル914円)や「キヌアみそ」(500㌘1019円)を製造販売。同社のホームページから購入できる。雑穀米ではキヌアを含んでいる商品も多く、知らないうちに口にしている人は多いはずだ。
(2013年7月8日日経流通新聞の記事)