食品産業界の万魔殿を実感する出来事
GMO表示化の賛否を問う住民投票の理不尽な結果
TPPでも問題になっている遺伝子組換食品使用表示問題。 現在、日本を含めた64ヵ国が、形式上、表示を義務化してはいますが、国により規制内容も異なっていて、グルテンフリー食品表示問題同様、規制基準検討の必要性が指摘されています。
以前から、当サイトでも取りあげているように、規制が厳しいEUでは、遺伝子組換作物を使用した食品すべてにGMO表示が義務づけられています。
EUでは表示をしなくてもよい、所謂 「意図しない混入率値」は0.9%未満と定められています。
<各国の意図しない混入率値>
◆日本 5%以下◆EU 0.9%未満◆韓国 3%未満◆オーストラリア 1%未満
参照>>>
最初の遺伝子組換食品は、1994年に米国で販売された「日持ちするトマト」です。その後、遺伝子組換食品は急増し、現在米国で販売されている約8割の食品は遺伝子組換食品です。特に、トウモロコシ由来食品の約9割は遺伝子組換トウモロコシが使われています。
にもかかわらず、最初の販売から20年以上経っても、米国では、遺伝子組換食品の表示義務がありません。そのため、世界中の多くの科学者が有害性に警鐘を鳴らしている遺伝子組換食品の表示規制を求める消費者が年々増加して、現在では、北米市場の90%以上の消費者が表示規制を求めています。にもかかわらず、いまだに、遺伝子組換食品使用表示は法律で義務化されていません。どういうことでしょうか??
こうした、米国の規制放置の背景には、多国籍バイオ企業による「種子の独占」という寡占の現実があります。モンサント、デュポン、シンジェンタの3社だけで、世界の種子市場の50%以上を独占しています。中でも、モンサントの遺伝子組換作物の種の世界シェアは90%以上です。実に、モンサント1社で世界の種子市場の25%を占めています。
こうした強大な既得権勢力によって米国の規制放置という現実がつくられてきました。
近年、さすがに米国の消費者も食の安全を無視した規制放置の危機的状況に疑問を呈して、 各州で討議されるようになりました。
そしてついに、2012年にカルフォルニア州で、表示の法的義務化の賛否について住民投票が実施され、翌年、2013年には、ワシントン州でも、同じく住民投票が実施されています。
これに対して表示義務化に真っ向から反対する、モンサントをはじめとする、デュポン、クラフトフーズ、ペプシコ、コカ・コーラ、その他巨大食品メーカーは約50億円の巨費を投じて、反対運動を展開しました。
2つの州の投票結果は、賛成49%、反対51%、という僅差で表示規制義務化は法律化されませんでした。
全米で90%以上の消費者が表示義務化を求めているにも関わらず、投票ではたった2%の差で否決されるという理不尽な結果になりました。
まさに、強大な既得権益者による食の万魔殿の存在を実感させられる出来事でした。
今も、全米各州でGMO表示義務の法律化を求める消費者運動が続いています。