日本の外食市場停滞は発想の乏しさが原因です。
バブル 崩壊後のデフレ経済の中、外食企業は価格破壊競争を続けています。その結果、顧客 離れで外食率は低迷し続けています。
1970年代の第2次米国外食チェーン導入組の大半が失敗。 長崎屋のアイホップ約30店舗のように顧客にとって魅力のない店舗が増えたことも外食率低下に拍車をかけま した。
日本の外食経営者の資質が米国よりも劣るということです。
日本の外食市場は低迷を続けていま すが、米国では、大手を中心に高品質高価格業態に進化して順調に外食市場を拡 大しています。
そのさきがけになった新業態がファッドラッカーズ のフィルロマーノが考案した ファストカジュアルという業態です。
ファストカジュアル業態のコンセプトは健康に留意した高品質の料理を消費者に提供することによって顧客の 信頼を獲得して顧客数の増加を目指しています。
ファストカジュアル業態の骨子は次の3つです。
◎顧客が注文してから必ずフレッシュ食材を使用して調理する。 レトルトや缶詰などの保存食材は使用し ない。ファストフードのような冷凍食材や旨味添加調味料や動物性油脂も使用しない。
◎調理工程が顧客に見えるようにして食材情報もすべて顧客に公開する。
◎来店者が快適に心地よく食事できるように清潔で斬新な内外装の店舗を設営する。
最近のパンケーキブームを起こしているお店もファストフード業態ではありません。
どの店もファストカ ジュアルやカジュアルレストラン業態です。
2006年に開店したクリスピークリームドーナツが人気 店になったのはご存知のとおりです。これもファストカジュアル業態のお店です。
今後、パンケーキ戦争を勝ち抜くのはファストカジュアル業態の店舗だということは 間違いないでしょう。
しかし、2010年4月に開店したクリスピークリームドーナツ大阪1 号店(心斎橋店)は今年2014年2月に早々と閉店しました。
2008年にクリスピークリームドーナツ香港7店舗が倒産する騒ぎもありました。
倒産に至った直接の原 因は、ドーナツをサックリ食感にするために植物性ショートニング を使用していたためにドーナツ1個 に含まれるトランス脂肪酸が1日当りの摂取許容上限量を超えて含まれていることが2007年に発覚したことです。
オーストラリア人が経営していた香港の店は以前から高くて不味いという風評 があったのでトランス脂肪酸の問題がとどめを刺すことになりました。
さて、心斎橋店閉店の話ですが、日本のクリスピークリームドーナツジャパンも香港と同じく米国クリスピー クリームドーナツ社とのフランチャイズ契約ですから日本側経営者の資質で商品の市場価値も変わってきま す。
香港と似ているのは高値設定です。この高値設定と不必要な店舗の設営が心斎橋店の閉店に繋 がった原因だと思います。 インサイドアウト思考で店舗開発し プライシングしてしまったのです。
ドーナツは、米国ではパンケーキや卵料理の朝食をゆっくり食べる時間のない消費者がコーヒーとド ーナツで朝食を済ませるという極めて日常的な食品です から本家米国のクリスピークリームドーナツは大衆価格 に設定されています。
ブランディングに溺れて無駄なコストを掛けて高値設定して差別化できると考えるの は本末転倒なパラドックスではないでしょうか。
他と同じくらいの値段で身体にやさしいできたてドーナツを 提供するのがスタンダードです。ゆっくり朝食を摂れない人達にちょっとでも身体にやさしくて美味しいでき たたてのドーナツを食べさせてあげたいという思いやりが無ければファストカジュアル業態は成功しません。
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関西人は関東人にくらべると食品価値をはかる能力は優れています。世界的にも阪僑と呼ばれ るだけあって損得勘定も並外れています。
「行列して食べんでも、なんぼでも安い美味しいもんあるや ろ!アホか!」
と言う大阪のおばちゃんの声が聞こえてきそうです。関西人に心斎橋店は受け 入れられなかったのですね。
商品も日本の消費者向け に工夫した方がいいですね。このままではファストカジュアル業態の優位性も薄れて競 合店に負けて店舗数も伸びません。
ファストカジュアルの話しに戻りましょう。
While the Kaneohe restaurant continues its full service diner experience, other locations are now fast-casual restaurants to help serve you quickly and efficiently. In the future, we plan on expanding to the neighbor islands and eventually nationwide.
カネオヘ店はカジュアルレストラン業態、その他の 店舗はファストカジュアル業態で営業していることを明記しています。このように米国の外食企業は新たな 業態を開発して独自の経営理念を打ち出して実践しています。
パンケーキやドーナツに日本の消費 者が行列をつくる理由はただひとつ。美味しいものを食べたいからです。 新鮮な食材を使った商品 を食べたいから並んでいるのです。
ロンギ―さんの食材に 対するこだわりやプラーおばさんの客への思いやりがファストカジュアルという思考の根本です。
賢明な方はお気づきでしょう。
ロマーノに教えられるまでもなく、日本では客の目の前で寿司を握 り、蕎麦やうどんを打って調理工程を見せて売る繁盛店が沢山あります。
他にも天ぷら、鉄板焼き、炉端焼 など日本人は新鮮な食材を客の前で調理して人気を得てきました。 もしかするとロマーノは日本式サービスを見てファストカジュアルを思いついたのかもしれません。
1969年の外資自由化に伴う1970年の大阪万博をきっかけに始まったデニーズ、マクドナル ド、ケンタッキーフライドチキン、ダンキンドーナツ、ミスタードーナツ等々の米国外食企業の第1次日本出 店ブーム以降の 日本では売上高や店舗数ばかりを競う経営者が増えマネー主義が 崇められてきました。
コストを下げるためにマニュアルを見ながら素人が接客し、安い 食材を使って調理する利益最優先企業が増えました。 そろそろクレバーで魅力的な経営者が現れるのを見て みたいものです。
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