スウェーデンのカロリンスカ研究所は3日、2016年のノーベル医学・生理学賞を、飢餓状態に陥った細胞が自らのタンパク質を食べて栄養源にする自食作用「オートファジー」の仕組みを解明した東京工業大の大隅良典栄誉教授(71)に授与すると発表した。
生命活動に欠かせない基本的な現象を明らかにし、医学や生物学の進歩に大きく貢献した功績が評価された。日本のノーベル賞受賞は3年連続で計25人。医学・生理学賞は昨年の大村智氏に続き計4人となった。
オートファジーはギリシャ語の「オート」(自分)と「ファジー」(食べる)を組み合わせた造語。栄養がなくなった細胞内に、二重膜でタンパク質などを取り囲むオートファゴソームという小胞ができ、分解酵素が入った細胞小器官と融合してタンパク質をアミノ酸に分解し、栄養源として再利用する仕組みを指す。 この現象が存在することは1950年代から知られていたが、分子レベルでのメカニズムや生理学的な意義は謎だった。
大隅氏は昭和63(1988)年、酵母でタンパク質などが分解されていく様子を光学顕微鏡で観察することに世界で初めて成功。平成5年にはオートファジーに不可欠な14種類の遺伝子を特定し、働きを次々と解き明かした。 その後、研究対象を動物細胞に拡大し、オートファジーの仕組みは人間など細胞内に核を持つ生物が共通して持っていることを発見。細胞内に侵入した細菌や不要物の除去など、さまざまな重要な役割を担っていることを突き止めた。 がんや神経変性疾患など多くの病気の発症に関連することも分かってきており、この分野の研究を急速に発展させた業績は国際的に高く評価されていた。
授賞式は12月10日にストックホルムで行われ、賞金計800万スウェーデンクローナ(約9500万円)が贈られる。