世界的有名レストランも瞬殺 驚異の感染力をもつ食中毒微生物の2強 ウィルス代表ノロウィルス Vs 細菌代表カンピロバクター
問われる衛生管理システムの再構築 2013年3月、世界的に有名なデンマークにあるレストラン 「ノーマ」 で集団食中毒が起きたのを記憶しておられると思います。当サイトでも紹介したローストチキンで有名な英国の 「ザ・ファットダック」 でも何度か食中毒が起きています。どうして、衛生管理をしているはずの世界でもトップクラスのレストランでそうした食中毒が起きるのでしょうか? 食中毒は、微生物による食中毒、化学性食中毒、自然毒食中毒の3つに大別されます。その中でも最近の食中毒発生原因の1位と2位を競っているのが悪名高きノロウィルスとカンピロバクターの2大微生物です。 チャートのとおり、ノロウィルスとカンピロバクターによる食中毒件数がとても多いのです。細菌が増殖しやすい夏にはカンピロバクターによる食中毒件数が増加し、ウィルスの活動が活発になる冬にはノロウィルスによる食中毒件数が急増します。 最近5年間の東京都の主な食中毒発生件数の推移 | 資料:東京都食品衛生協会 |
平成23年に東京都で発生した食中毒の月別件数 | 資料:東京都食品衛生協会 |
ノロウィルスによる食中毒は生カキが原因とされていましたが解明が進み、最近では、製造担当者や調理担当者の手指から汚染して食中毒を起こす事例が多いことが分かっています。 ノロウィルスは、元々、人の小腸にいるウィルスで、カキの汚染経路は、人の便➔下水➔植物性プランクトン➔カキとなり、そのカキを人が食べて中毒が起こります。 ノロウィルスによる食中毒がこれほど多いのはその感染力で、人の便1g中に10億のノロウィルスがいるとされています。ノロウィルスが10個~100個あれば人から人へ感染するので、たった1gの便で100万人感染する計算です。 デンマークのノーマや英国のファットダックなどの食中毒もノロウィルスの驚異的な感染力によるものでした。ノロウィルスの場合、感染と食中毒の割合は8:2といわれていて圧倒的に感染が多いのです。 皆さんのお店では、 ◇調理人以外のフロアスタッフや納品業者が調理場に出入りしていませんか? ◇調理場スタッフの手洗い方法、回数などを定めて常に教育していますか? ◇衛生責任者は毎日スタッフの体調をチェックして下痢など少しでも体調不良があるスタッフは休ませていますか? ◇調理場スタッフ専用トイレがありますか? ◇手洗い場に給湯設備は整っていますか? ◇蛇口は自動給水ですか? どれかが不備なお店は、いつ食中毒が起きても不思議ではありません。 食中毒を起こした有名レストランも、こうした衛生管理体制に明らかな漏れがあったはずです。前述のとおりノロウィルスは感染が80%です。お店のフタッフの1人が健康保菌者であれば、あっという間に調理場スタッフ全員がノロウィルスに感染し、その手指で調理すれば料理が汚染され食中毒が起こります。又、トイレを客と共用している場合、客の一人が感染していれば、あっという間にスタッフを含めた店内にいる人のほとんどがノロウィルスに感染します。 たとえ料理は凄腕でも食中毒に関する知識が曖昧であれば、どのようにして食中毒が起きたのかさっぱり分からないという事態になります。凄まじい感染力を防ぐためには衛生管理システムの見直し近代化が必要だということです。旧態依然とした衛生管理体制のお店は食中毒が起きないほうが不思議だということです。
もう1つの細菌微生物カンピロバクターですが、牛・豚・鶏などの腸管内にいる酸素含有率が3~15%の微好気性の細菌でスーパーなど市販の肉の50~60%に付着しているとされています。ノロウィルス同様100個程の菌数でも発症するため発生件数が多いのです。食中毒発症原因の大半は、食肉、特に生あるいは加熱不足の鶏肉や内臓類、牛レバーが原因とされています。 更に、牛の肝臓内部から腸管出血性大腸菌O157が検出されたため、平成24年7月1日から牛レバーを生食用として販売したり提供したりするのが禁止されました。 カンピロパスターは常温で徐々に死滅しますが勘違いしてはいけないのは新鮮な肉ほど危険だということです。新鮮だからといって、牛刺しや鶏刺しなどの生肉を食べるのは自殺行為です。食中毒の知識が無いお店で 「うちの肉は新鮮だから刺身で食べれるんです」 と自慢している方を見かけます。いかに怖ろしいことを話しているかお分かりになるでしょう。 近年、いろんな要素が複雑に組み合わさって食の危険性が大きくなっています。食品を取り巻く環境には有害食品ばかりではなく食中毒や感染など様々なリスクがあります。 事業者は、万一に備えて、しっかりとした食品衛生責任者を置き店員に対する衛星教育と自主検査を徹底し食品衛生情報に関する記録を厳しく作成保存することが必須です。 お店の手洗い場やトイレにはお店の衛生管理知識レベルが表れます。手洗い場の蛇口が自動給水(冬は温水)になっていなかったり、トイレの出入扉が自動開閉でないお店は要注意です。いくら手を洗ってもハンドルやドアを触ったら簡単に感染してしまいます。 衛生管理知識のあるお店は手洗い場に消毒用のエタノールを常備しています。エタノールは手の表面の水分をしっかりとってから使用します。手が濡れていると効果が出ません。そういう注意事項を客やスタッフが一目で分かるように掲示してあるようなお店は衛生管理レベルが高くサービス特性の優れたお店だといえます。 飲食店には、年々進化して感染力を増す微生物に備える衛生管理システムが必須となっています。おいしい料理と食の安全を提供できてこそ優良店です。皆さんも普段から最低限の衛生管理知識を学んで、微生物の脅威に備えて衛生管理に厳しいお店を選ぶように心がけてください。 |